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タクシー運転手の平均年齢が高い理由とは?独自の勤務形態を解説

タクシーのイメージ 転職
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普段からタクシーをよく利用している人なら実感しているように、運転手には年配の人が多いイメージがあります。実際にタクシー運転手は中高年でも転職が可能な仕事として、特に男性の間で人気の職業です。

タクシー運転手の平均年齢が高いのはどうしてなのか、タクシー会社独自の勤務形態や歩合給のシステムをヒントに考察してみました。

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タクシー運転手の平均年齢

還暦祝い

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会が公開している統計調査によると、タクシー運転者の平均年齢は令和3年の時点で60.7歳でした。全産業労働者の平均年齢43.4歳と比較して、タクシー運転手の年齢の高さが際立っている状況です。これらの数字は、「タクシーの運転手には中高年以上の男性が多い」というイメージにも合致します。

もちろん若い運転手や女性の運転手もいますが、数の上で50代以上の男性運転手が多いのは確かです。筆者の従兄弟もさまざまな運転の仕事を渡り歩いた末、40を過ぎてからタクシー会社に転職しました。個人事業主に近い稼ぎ方が性に合ったと見えて、「天職を得た」と言いながら生き生きと働いています。

タクシー運転手の平均年齢は都道府県ごとに差も見られ、都市部より地方のタクシー会社ほど年齢が高めの傾向です。平均年齢が最も低い東京都は57.2歳ですが、最も高い青森県では67.5歳にも達します。全産業労働者の平均年齢は都道府県ごとの差が小さく、最も高い県と低い県の年齢差は3歳程度に過ぎません。

東京都は都心エリアを中心として、タクシー運転手は比較的若い世代が多いとも言えます。それでも平均年齢は約57歳ですので、普通の会社では定年間近の年代です。むしろ定年退職後の転職先として、タクシー運転手の職を選んでいる人も少なくないものと推測されます。

タクシー運転手の平均年齢が高い理由

他の業種と比べてタクシー運転手の平均年齢が高い理由としては、以下のような要因が考えられます。

  1. タクシー会社の側で年齢が高めの人でも積極的に採用している
  2. タクシー会社の設定している定年の年齢が一般の会社より高い
  3. 定年後も嘱託社員として働き続けることが可能なタクシー会社が多い
  4. よほど高齢でない限り、車の運転は中高年以上の人でもできる仕事だから
  5. 運転経験や人生経験を生かせる仕事だから
  6. 特殊な勤務形態で休みが多く、中高年以上の人でも働きやすい

一般の会社の場合、40代以上になると転職するのが難しくなってきます。40代以上の人は新人として扱いにくいせいか、長期的なキャリア形成を前提とした求人が極端に少なくなるからです。

その点でタクシー会社は40代以上の人でも採用に前向きで、50代以上での転職成功例も珍しくありません。タクシー運転手は40代以上の人の転職先として、格好の受け皿になっている面もありました。

タクシー会社は普通の会社と違って、ドライバーの定年を65歳としているところが大半です。定年を迎えた後も嘱託契約の形で再雇用に応じているタクシー会社が多いせいか、70代の運転手も少なくありません。

客待ちタクシーの列

タクシー運転手の勤務形態は後述するように、月に11日から13日程度の隔日勤務が主流です。休みが多く取れる勤務形態のため、年金を受給しながらマイペースで働くライフスタイルも可能になってきます。

タクシー運転手は接客業の側面もあるだけに、豊富な人生経験を仕事に生かせる点でも、中高年以上の人に向いた仕事です。もちろん運転技術の点でも、運転歴が長いベテランのドライバーなら十分に対応できます。以上のような理由から、タクシー運転手の平均年齢は会社員全体の平均より高めとなっているわけです。

ちなみに個人タクシーの場合は許可の更新に年齢の上限が設けられている関係で、75歳が実質的な定年となります。個人タクシーを開業するには3年間の無事故無違反という条件に加え、タクシーなどの乗務経験が10年以上必要です。

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タクシー運転手の勤務形態

タクシー運転手の平均年齢が高い理由の1つに、マイペースで働きやすい環境が整っているという点が挙げられます。隔日勤務と呼ばれるタクシー業界特有の勤務形態を選べば、月のうち半分以上の日が実質的な休日となるからです。

タクシー運転手の中には普通のサラリーマンと同じように、日勤の勤務形態で働いている人もいます。夜勤専門の勤務形態もありますが、仕事を休める日が最も多いのは隔日勤務です。定時制と呼ばれる働き方も含め、それぞれの勤務形態について解説します。

隔日勤務

タクシー運転手の勤務形態で最も多いのは、乗務のある日と休みの日を交互に繰り返す隔日勤務のスタイルです。出勤日に日勤と夜勤を兼ねて長時間働く代わりに、翌日は必ず「明け番」と呼ばれる休みになります。

明け番の日は体を休めることが最優先されるため、厳密な意味での休日ではありません。次の乗務に備えてしっかりと休息を取り、体調を整えるのも仕事のうちというわけです。

正式な公休日は乗務と明け番の合間合間に、1ヶ月あたり5日から6日程度設けられます。乗務を伴う出勤日は、1ヶ月の半分以下に当たる11日から13日程度です。明け番と公休日が続く場合には、実質的に連休を取るのと変わりありません。

出勤日は拘束時間が最大で21時間にも達しますが、この間の最低3時間は休憩時間に当てられます。3時間まとめて休憩を取るドライバーもいれば、1時間ずつ小刻みに分散して休憩を入れるドライバーもいます。そのへんはドライバー自身の裁量に任せられていますので、自分の働きやすいように便宜休憩を入れるのが長丁場を乗り切るコツです。

休憩以外の時間帯であっても長距離トラックや高速バスの運転手と違って、必ずしも長時間にわたって運転の仕事を強いられるわけではありません。より多く稼ごうと思えば車両の稼働率を高める必要もありますが、待機時間を長くしながらマイペースで乗務をこなすことも可能です。

日勤

法人タクシーの勤務形態は以上のような隔日勤務が主流ですが、普通のサラリーマンと同じ日中の時間帯だけ乗務をこなす働き方も用意されています。日勤と呼ばれるこの勤務形態は女性の運転手や、高齢で長時間の乗務をこなすのが難しくなった運転手に向いた働き方です。朝の7時から午後4時まで、または朝8時から夕方の5時までといった勤務時間が考えられます。

乗務1回あたりの拘束時間は隔日勤務より短い代わりに、日勤のドライバーに乗務翌日の明け番はありません。休憩時間も1回の乗務につき1時間です。月の勤務日数は22日から24日程度で、一般的な会社員と同じような働き方となります。

日勤の場合は早朝の利用が多い通勤のサラリーマンや、午前中の利用が多い病院通いの高齢者がメインの客層です。ホテルのチェックアウト時刻に合わせてお客さんを拾っているタクシードライバーも少なくありません。日勤は夜勤ほど効率的に稼げないと言われているだけに、自分なりの稼ぎ場をいかに確保できるかが鍵となってきます。

夜勤

夜の街に並ぶタクシーの列

タクシー会社も工場や倉庫・コンビニなどと同じように、原則として24時間稼働しています。日勤のドライバーに代わって夜間の需要に応えているのが、夜勤のシフトを専門にこなすドライバーです。

月の勤務日数や乗務1回あたりの休憩時間は日勤と同じですが、夜勤のドライバーは勤務時間が大きく異なります。夕方の5時や6時から翌日の午前2時または3時までというのが、夜勤の一般的な勤務時間の例です。繁華街や駅前でお客さんを拾うケースが多く、日勤と比べて長距離のケースも増えてきます。

深夜の時間帯は割増料金が加算されるため、日勤よりも稼ぎやすいのが夜勤のメリットです。ただしタクシー会社にとっては隔日勤務の方が営業に都合がいいため、日勤や夜勤で運転手を募集している求人はそれほど多くありません。

定時制

以上のような勤務日数や勤務時間は、タクシー会社に正社員の運転手として採用された場合の話です。タクシー会社では正社員の他に、勤務日数の短い定時制と呼ばれる働き方も用意しています。定時制は勤務日数が正社員の3分の2以下で、アルバイトやパートに相当する雇用形態です。

定時制で採用された場合でも、勤務形態は隔日勤務と日勤・夜勤の3種類から選べます。日勤で土日のみ乗務をこなすような定時制の求人が見つかれば、平日の日中に会社の仕事があるサラリーマンでもタクシー運転手を副業にすることは可能です。年金を受給しながら定時制で働いているシニアのタクシードライバーも少なくありません。

タクシー運転手は儲かる?

タクシーとお金のイメージ

タクシーの運転手は休みが多く自由度の高い働き方が魅力ですが、気になるのは「実際にどれだけ稼げるのか?」という点です。収入の多い少ないはドライバー次第で、高収入を稼いでいる人もいれば、あまり稼げない人もいます。

同じタクシー運転手の間でも収入に大きな格差が見られる理由は、タクシー会社独自の歩合給です。一般の会社でも営業職には同じような歩合制があって、ノルマを上回る成果を出した分だけ基本給に上乗せした給料が加算されています。

タクシー会社のノルマは足切りと呼ばれていますが、ノルマを達成できなかったとしても給料がゼロになるわけではありません。足切りを上回る分の営業利益に一定の歩合率をかけた金額が、基本給に加算される仕組みです。

基本給と歩合給の割合はタクシー会社によって異なり、以下のような3種類のパターンがあります。

  1. 基本給が固定給となっているA型の賃金システム
  2. 基本給の部分が最低賃金の時給となっているB型の賃金システム
  3. 歩合の一部を積み立て、賞与として支給されるAB型の賃金システム

A型は安定した給料がもらえる代わりに、売上が良い月でもそれほど高収入は稼げません。B型は最も高収入を稼げる可能性を秘めた歩合制ですが、売上が悪いと最低賃金クラスまで給料が下がってしまいます。大手タクシー会社の間では、A型とB型の中間形態とも言えるAB型が主流です。

歩合給の相場

大手タクシー会社では固定給が18万円から20万円前後で、歩合率は60%前後が平均的な相場です。これは経営基盤のしっかりした大手の話で、中小規模のタクシー会社だと固定給や歩合率がもっと低い場合もあります。全国的に見た場合の歩合率は、50%から60%程度とも言われています。

売上のノルマに相当する足切りの金額は、1日あたり3万円前後に設定しているところが大半です。仮に1日平均4万円の売上があったとすると、足切りが3万円で歩合率が60%なら、1日あたりの歩合給は6,000円ということになります。

隔日勤務で月に12回の乗務をこなした場合、基本給が18万円で歩合給が6,000×12=72,000円なら、給料の合計は252,000円になる計算です。売上を増やせば増やすほど歩合給の割合も増え、さらに高収入を稼げることになります。

タクシー運転手の平均年収

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の統計調査によると、タクシー運転者の平均年収は令和3年の時点で約280万円でした。前年比で20万円近くも減っていますが、これはコロナ禍によるタクシーの需要減も一因と推定されます。

コロナ禍の以前でもタクシー運転手の平均年収は300万円程度で、会社員全体の平均年収を下回っていました。数字だけを見れば「タクシー運転手は儲からない仕事」と思いがちですが、数字の背後にはタクシー業界特有の事情があります。

この記事の前半でも取り上げてきたように、タクシー運転手には中高年以上の人が少なくありません。休みが多く柔軟な働き方が可能なため、普通の会社を定年退職したような人にも務まりやすい仕事です。

年金を受給しながらタクシー運転手を続けている人の場合、働き盛りの世代と違ってそこまで貪欲に稼ぐ必要はありません。「少しでも収入を増やせれば儲けもの」ぐらいのつもりで働いているシニアドライバーの数字も、平均年収に含まれてきます。平均年齢が40代の全産業労働者と比べ、タクシー運転手の平均年収が低いのは当然と言えば当然です。

中には歩合給の仕組みを最大限に活用し、会社員の平均を大きく上回るほどの高年収を稼いでいるタクシー運転手も少なくはありません。稼いでいる人と稼げない人(または稼ごうとしない人)との間で収入に大きな差が見られるという点で、タクシー運転手はサラリーマンより個人事業主に近い働き方とも言えます。

個人事業主だと最悪の場合は収入ゼロもあり得ますが、タクシー会社に雇われている運転手なら給料ゼロということはありません。売上がノルマに達しない場合でも、最低限の基本給をもらえるのが普通です。

まとめ

渋谷の街で停車するタクシー

タクシー運転手の平均年齢が高い最大の理由は、柔軟性のある自由な働き方を可能にした勤務形態にあります。車を運転する仕事なら中高年以上の人でも適応しやすく、運転経験や人生経験を仕事に生かせるという点も理由の1つに数えられます。タクシー会社の側で40代以上の人を積極的に採用しているのは、中高年でも十分な戦力になると見込まれている証拠です。

タクシー運転手の給料は独自の歩合給を加算するのが普通で、売上が多ければ多いほど収入が増えていきます。年金を受給しながら働いているドライバーも含まれるため平均年収は低めですが、稼ぐ気になれば高年収を稼ぐことも可能な仕事です。普通の会社だと40代以上は転職さえ難しいのが現状だけに、タクシー運転手は第2の人生を目指すのに有力な選択肢となり得ます。

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