ぷっくりした可愛らしいフォルムが人気の多肉植物は、簡単に増やせるのが特徴の観葉植物です。自分で多肉植物を増やし、苗や種を売って稼ぐ副業が儲かると言われてきました。一時期のブームは一段落した感もありますが、ガーデニングの分野では今でも安定して売れている商品です。
一方で多肉植物の中には、種苗法の対象となった登録品種もあります。増やした苗や種を販売すると、違法になる場合があるという点には注意が必要です。これから多肉植物の販売を始めたいと考えている人に向けて、注意点を含めた最新情報をまとめてみました。
ガーデニングを趣味にしていると、道具や資材の購入で何かと費用がかかるものです。増やした多肉植物の販売を副業にすれば、趣味のガーデニングで逆に収入を増やせるようになります。
多肉植物の栽培を副業にする方法
多肉植物は葉や茎に水分を蓄えるように進化した植物で、砂漠のような乾燥地帯に自生していたものが原種です。栽培が容易で室内でも育てられることから、観葉植物として愛好されてきました。
多肉植物はホームセンターや100円ショップでも売られていますが、ちぎった葉を土の上に置いておくだけで簡単に増やせます。増やしたものを苗にして売れば、少ない元手で大きく稼ぐことも可能です。多肉植物のブームで高く売れる例も出てきたことから、「儲かる副業」として話題を集めています。
多肉植物の栽培を副業にするための手順は以下の通りです。
- 店舗や通販サイトなどで多肉植物を購入する
- 購入した多肉植物を増やす
- 増やした多肉植物を販売先に出品する
- フリマサイトなどに出品して売れた場合は、商品を発送する
- 代金が振り込まれて収益が発生
多肉植物の増やし方と販売方法に分けて、それぞれ詳しく解説していきます。
多肉植物の増やし方
多肉植物を増やして販売する副業も、物販ビジネスの一種です。物販で稼ぐには、普通は売るための商品を仕入れる必要があります。売上の全額が収益になるわけではなく、次に売る商品の仕入れ費用を残しておくことも必要です。
多肉植物の場合は商品を自分で作れるため、代金を払って商品を仕入れる必要がありません。水や土など間接的なコストは発生しますが、苗や種などの商品そのものは新たに仕入れなくても勝手に増えていきます。苗の形で販売するにしても、他の植物だと種から育てたり挿し木(挿し芽)で増やしたりと、商品を作るのに結構な手間がかかります。
多肉植物の場合は品種によっても増やし方が異なりますが、葉をちぎって土の上に置いておく増やし方が一般的です。普通に栽培していても自然に落ちた葉から根が出てきて、放っておくとどんどん成長していきます。多肉植物を栽培していると勝手に増えてしまうため、場所がなくなると言われているほどです。
販売目的で多肉植物を増やすには、「葉が土の上に落ちただけで勝手に増える」という性質を逆に利用します。ちぎった葉を土の上に並べて半日陰に置いておけば、通常は10日ほどで根が出てきて発芽を始めます。葉が4~5枚ほどに育てば移植が可能になり、苗として販売できるようになるというわけです。
多肉植物の多くはこうした葉挿しの手法だけでなく、一般的な挿し木の手法でも増やせます。ピリフェラやハリシー・子持ち蓮華など一部の品種では、親株から子株を切り分ける株分けの手法で増やすことも可能です。
多肉植物を商品化する3つの方法
以上のようなやり方で多肉植物は無尽蔵に増やせますが、どれだけ増やしても売らないことには副業の手段にはなりません。多肉植物の栽培を副業にするためには、増やしたものをどうやって売るかが問題です。
販売方法については後述するとして、まずは多肉植物をどのようにして商品化するかという点を解説します。
増やした多肉植物を商品化する方法は以下の3通りです。
- 苗として販売する
- 種子として販売する
- 多肉植物の寄せ植えを作って販売する
それぞれ詳しく解説します。
多肉植物の苗を売る
多肉植物は種の形でも売られていますが、種をまいても必ず発芽するとは限りません。種から育てるのは難しい面もあるせいか、ほとんどの人は苗を購入しています。自分で増やした多肉植物を売る場合でも、苗の形で販売している人が大半です。
多肉植物の苗を売るには、以下のような3つの販売方法があります。
- 苗ポットや鉢に入れた状態で販売する
- 根から土を落とした抜き苗の状態で販売する
- 根の部分を切り落とした状態で販売するカット苗
親株からちぎった葉を発根させてから販売するのが抜き苗で、発根する前に売るのがカット苗です。カット苗なら多肉植物を最も簡単に商品化できるせいか、メルカリでも出品例が増えています。多肉植物を増やして苗に仕立て上げれば第四種郵便物として発送が可能なため、郵送費も宅配便を利用するより安上がりです。
多肉植物の種子を販売する
多肉植物は葉挿しや挿し木・株分けといったクローン栽培の手法で増やすのが一般的ですが、種をまいて育てることも可能です。他の園芸植物と同様に、多肉植物も種から育てるのは難易度が高めです。種をまいてから販売可能な状態まで育つのに早くても2年、遅い品種では5年ほどもかかります。
多肉植物を種から育てて苗に仕立て上げるのはなかなか大変ですが、採取した種そのものを商品化することも可能です。実際にAmazonや楽天市場といった大手通販サイトはもとより、メルカリやYahoo!オークション(旧ヤフオク)のようなフリマサイトでも多肉植物の種が売られています。
花が咲く種類の多肉植物を栽培する中でうまく受粉させれば、個人でも種を採取して販売することが可能です。異なる品種の多肉植物同士を交配させ、新しい品種の種を作る「育種」を仕事にしている人もいます。葉挿しで増やした苗を売る副業よりも難易度が格段に高くなりますが、交配に成功すれば大きな収益につながる可能性が出てきます。
多肉植物の寄せ植えを売る
多肉植物の栽培を副業にする第3の方法は、いろいろな種類の株を同じ容器で一緒にした寄せ植えの販売です。多肉植物は個性豊かな品種が多く、寄せ植えにするとおしゃれなインテリアが出来上がります。
多肉植物をきれいに飾り付けるにはセンスが求められるだけに、寄せ植えを作るのが苦手な人も少なくないはずです。センスに自信がある人には、自分で作った寄せ植えを売ってお金を稼ぐチャンスがあります。
minneやCreema(クリーマ)といったサイトには、ハンドメイド作家の作った多肉植物の寄せ植えが数多く出品されています。メルカリやラクマなどのフリマアプリでも出品は可能ですので、腕に自信がある人は寄せ植えの販売にもチャレンジしてみるといいでしょう。
寄せ植えは宅配便で送るのが一般的で郵送費は多くかかりますが、minneやCreemaなどハンドメイドマーケットは送料を購入者で負担するのが一般的です。出品価格の単価も全般に高めで、作るのに手間がかかる分だけ1品あたりの収益も増やせます。
多肉植物を個人で販売する方法
多肉植物はホームセンターや園芸店・花屋さんだけでなく、100円ショップやスーパーでも売られています。それらの店は仕入先がある程度決まっていて、仕入れ値は安価な卸価格です。
野菜や花などと同じように、多肉植物を栽培している農家が存在します。農家で大量生産された多肉植物が問屋に出荷され、ホームセンターなどの小売店舗に流通している状況です。
個人が付け入る隙などなさそうに見えますが、実際に多肉植物の販売を副業にしている人は何人もいます。問屋を介した通常の流通ルートでなければ、個人でも多肉植物を販売できないことはありません。
個人が多肉植物を売るのに向いた販売方法は以下の4通りです。
- 自宅で無人販売
- 道の駅で委託販売
- メルカリでネット販売
- 個人でネットショップを運営
農家の人が野菜を直接販売するにも利用されている手段です。多肉植物の販売にも応用できますので、それぞれ詳しく解説します。
自宅で無人販売
人通りのある道路沿いに家を持っている人なら、自宅の敷地が多肉植物の無人販売所になります。多肉植物の無人販売所は野菜ほど多くありませんが、低コストで直接販売できる点がメリットです。自宅の敷地なら自由に販売できますので、試してみる価値はあります。
SNSなどで情報発信すれば、少し離れたところに住んでいる人が買いに来てくれるかもしれません。商品を出荷したり発送したりする必要がないという点では、一番楽な販売方法と言えます。
野菜の無人販売所と同じように、防犯対策は1つの課題です。防犯カメラなどを設置すれば盗難のリスクは低くできますが、それなりのコストがかかってきます。
道の駅で委託販売
集合住宅に住んでいたりして無人販売が難しいという人は、道の駅の直売所で委託販売してもらうという手があります。入会金や年会費・販売手数料はかかりますが、販売の方は道の駅に代行してもらえます。入会金・年会費は数千円程度で、販売手数料は15%というところが多いです。
ある程度まとまった分量を出品する必要もありますが、道の駅は大きな集客力を持っています。自宅の敷地で無人販売するのと比べ、販売のチャンスが何倍にも増える売り方です。
メルカリでネット販売
無人販売所を設ける場所がなくて、道の駅で委託販売するのもハードルが高いという人には、フリマサイトのメルカリに出品するのがおすすめです。出品や梱包・発送の手間はかかりますが、メルカリを利用すれば販路を全国に拡大できるようになります。
実際にメルカリでは農家や業者ではない一般の人が育てた多肉植物が、数え切れないほどたくさん出品されている状況です。それだけ競争も激しくなっていますので、出品の工夫が求められます。あえて販売状況「売り切れ」で検索し、完売した出品の例を参考にしてみるといいでしょう。
すでに他のジャンルの商品でメルカリに出品したことがあれば、多肉植物の出品もスムーズです。出品を工夫しても実績が少ないうちは、なかなか購入してもらえないことが考えられます。相場より低めの価格に設定して、少しでも売れやすくする対策が必要です。
ラクマやYahoo!フリマ(旧PayPayフリマ)・Yahoo!オークション(旧ヤフオク)など、他のフリマサイトやネットオークションを併用するという手もあります。出品の手間は余計にかかりますが、露出を増やした方が少しでも売れやすくなるはずです。
個人でネットショップを運営
フリマアプリやネットオークションで商品を販売すると、売上から10%前後の手数料が引かれてしまいます。多肉植物販売のビジネスが軌道に乗ってきたら、自分で専用のネットショップを開業して販売するのも1つの方法です。
BASEやSTORES・カラーミーショップといったネットショップ作成サービスには、初期費用・月額料金0円のフリープランが用意されています。SNSなどを使って自分で集客する必要はありますが、売上から引かれる販売手数料はフリマアプリより安く済むという点がメリットです。
初心者のうちはフリープランからスタートして、売上が軌道に乗ってきたら有料プランに移行するという手もあります。有料プランは月額料金がかかる代わりに、売上から引かれる手数料はフリープランより安く済むのが一般的です。売上が増えてくると、フリープランより有料プランの方がトータルでお得になります。
個人でネットショップを運営する場合、SNSやブログなどを活用した集客の工夫も欠かさせません。サイト自体に集客力があるメルカリなどと違って、個人のネットショップはゼロから集客する必要があるからです。多肉植物販売のスタートはメルカリを利用し、慣れてきたところでネットショップ開業も検討してみるといいでしょう。
多肉ブームはもう終わり?
2017年頃から多肉植物の栽培がちょっとしたブームとなり、ネットオークションでも落札価格が高騰する事態となりました。その背景には、中国や東南アジアなどアジア各国で多肉植物の人気が高まったという事情があります。
海外の富裕層が日本で珍しい多肉植物を買いあさり、ネットオークションでも高額で落札する例が相次ぎました。素人が増やした多肉植物が高値で次々と売れていったことから、「儲かる副業」としてもてはやされてきたわけです。
そんな一時期のブームも最近は一段落した感があり、ヤフオクでも以前ほどの高値で落札される例は少なくなりました。ブームはいつか終息するものですが、中国や韓国などの海外で多肉植物の人気品種が安価に量産できるようになったのも一因です。
多肉植物は葉挿しなどの手法で簡単に増やせる点が特徴だけに、一度量産体制が整ってしまうと値崩れを起こしやすい面もあります。今は珍しい品種として高値が付いている品種でも、多く出回るようになれば価格の下落は避けられません。
一方では交配によって次々と新しい品種が生み出され、珍しいうちは高値で売れています。多肉植物の販売を副業にする際には、高く売れる品種の見極めが大切です。市場の動向にも絶えず目を配り、価格が下落しつつある品種からは撤退するぐらいの思い切りが必要になってきます。
多肉植物の副業は今でも儲かる?
多肉植物のバブルは過ぎ去ったと見る風潮が支配的ですが、メルカリの出品状況を見ると今でも活発に売り買いされています。価格の方は落ち着きを取り戻し、手頃な値段で出品している人の例が目につく状況です。以前ほど「儲かる副業」ではなくなりつつあるとは言え、多肉植物にはまだまだ安定した需要がある様子も窺えます。
市場でまだ多く出回っていないレアな品種であれば、1万円以上の高値で売れる可能性があります。そこまで極端な高値でなくても、1,000円前後で完売している例は少なくありません。多肉植物の苗や種は第四種郵便物として安価に発送できますので、送料を出品者で負担しても収益を残せます。以前ほどの高収入を稼ぐのは難しくなったというだけで、副業としては十分に成り立つ状況です。
メルカリで多肉植物を売るのは違法?
多くの人が利用するメルカリを使えば、個人でも多肉植物を売れるようになります。単純な転売であれば問題ありませんが、増やしたものを売ると違法になる品種があるという点には注意が必要です。
種苗法が改正されたことで、野菜・果物・園芸植物などの苗や種の販売に制限が加わるようになりました。多肉植物も農林水産省に品種登録されている場合は、育成者に許可を得ないで増やしたものを販売する行為が禁止されます。
無許可で登録品種を勝手に販売すると種苗法違反に問われ、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金という刑事罰の対象となってしまいます。実際に2021年4月の種苗法改正後に、品種登録されたシャインマスカットの苗を無許可で販売した人が逮捕されました。販売の手段は「フリマサイト」ということですので、メルカリが使われた可能性もあります。
多肉植物ではまだ逮捕者が出ていない様子ですが、種苗法の対象になるという点では野菜や果物などと変わりありません。メルカリの規約上でも、育成者権を侵害する商品は出品禁止の対象です。メルカリ以外のフリマサイトや他の販売方法でも、無断で増やした登録品種を勝手に販売することはできません。
品種登録された多肉植物を育成者に無断で増やして出品した場合、メルカリの規約違反になると同時に種苗法にも違反することになります。登録されていない品種や登録期限が切れた品種であれば、増やしたものをメルカリに出品しても法律違反にはなりません。販売しても問題ないかどうか、出品する前に確認しておくことをおすすめします。
販売に許可が必要な多肉植物の登録品種
品種登録制度は植物版の特許とも言える仕組みで、品種を開発した育成者の知的財産権が法律で保護されます。多肉植物も新たな品種の開発が盛んな分野で、品種登録されている例が少なくありません。
インターネットで登録品種を検索できる流通品種データベースで調べてみると、ハオルチアで93件、カランコエは231件の品種が出願されていました。データベースに掲載されている場合でも、すべてが登録品種とは限りません。出願中の品種や、登録期限が切れて育成者権が消滅した品種もあります。
出願中の品種はいずれ登録品種となる可能性がありますので、勝手に販売するのは避けておくのが無難です。登録期限が切れた品種であれば特許が切れた商品と同じ状態で、増やしたものを販売しても違法にはなりません。
種苗法が改正されたことで、販売する側にも品種登録の表示が義務付けられました。パッケージに登録品種を示すPVPマークを印刷している商品もあれば、「登録品種」「品種登録」などと表示してある商品もあります。
登録された品種であっても育成者の許可を得ていれば、品種登録の表示をした上で増やしたものを販売できるようになります。「どうしても登録品種を増やして売りたい」という場合は、流通品種データベースで育成者の連絡先を調べてみるといいでしょう。
多肉植物の副業まとめ
多肉植物は一過性のブームという枠を超えて、需要の安定期に入ったと解釈することも可能です。以前ほどの高値では売れにくくなったとは言え、メルカリやヤフオクでは今も根強い人気を維持しています。
室内での栽培が可能で簡単に増やせることから、多肉植物の販売は在宅の副業にもなり得るビジネスです。カット苗や抜き苗などの苗に仕立て上げて売るのが王道ですが、多肉植物を商品化する手段は他にもいろいろと考えられます。自分で交配して作り上げた新品種の種を販売したり、ハンドメイド作品として寄せ植えを販売したりすることも可能です。
自分の得意な方法で多肉植物を商品化すれば副業も長続きし、成果が出やすくなります。登録品種の扱いには十分に注意しながら、多肉植物を売る副業にチャレンジしてみるといいでしょう。